介護を受ける側の声:利用者が本当に求めている「良い介護」とは
「良い介護」とは何でしょうか? 介護をする側は、専門的な知識や技術、献身的な姿勢を思い浮かべるかもしれません。しかし、本当に大切なのは、介護を受ける側の視点に立つことです。今回は、利用者が本当に求めている「良い介護」について、その本質を探ります。
「できること」を奪わない
介護を受けるようになったとき、多くの人が感じるのは「自分らしさ」が失われていく感覚です。今まで当たり前にできていたことが、少しずつできなくなり、他者の助けを借りなければならない。そんな状況で、介護者が良かれと思ってすべてを代わりにしてしまうことがあります。しかし、それは利用者の「できること」や「やりたい」という意欲を奪ってしまうことになりかねません。
利用者が本当に求めているのは、「手助け」であって「すべてを代行すること」ではありません。
- 見守る勇気:転倒を恐れてすぐに手を出してしまうのではなく、安全な範囲で見守り、できる限り自分でやってもらう時間を与えましょう。
- 小さな「できた」を喜ぶ:たとえ時間がかかっても、利用者自身ができたことを一緒に喜び、その頑張りを認めてあげることが、次の意欲につながります。
介護の先に「人」を見る
介護サービスは、身体的な介助や生活支援が中心になりがちです。しかし、利用者は単に「要介護者」という枠組みで括られる存在ではありません。一人ひとりに、生きてきた歴史があり、個性があり、そして感情があります。
- 対等な会話:上から目線で話しかけるのではなく、一人の人間として対等な立場で会話を楽しみましょう。趣味や昔の話など、その人の人生に興味を持つことで、信頼関係が深まります。
- 「ごめんなさい」と言える関係:介護は人間が行うものです。時にはミスをすることもあります。そんな時、「ごめんなさい」と素直に謝れる関係は、利用者に安心感を与えます。完璧な介護者であることよりも、正直で誠実な態度が大切です。
孤独を埋める「心の介護」
身体的な介護がどんなに完璧でも、心が満たされていなければ、利用者は孤独を感じてしまいます。病気や障害によって、社会から孤立していると感じる人は少なくありません。
- 共に過ごす時間:マニュアル通りの介護だけでなく、お茶を飲みながら談笑したり、庭の花を見に行ったりするような、心を通わせる時間を作りましょう。
- 趣味や楽しみを共有する:昔好きだったことを一緒にやってみたり、新しい趣味を提案してみるなど、生活に彩りを与える工夫が、生きる喜びにつながります。
「良い介護」とは、単に身体を清潔に保ったり、食事を介助したりすることだけではありません。**その人が「その人らしく」いられるよう、尊重し、心を支えること。**そして、「私はまだ大丈夫だ」「生きるって楽しいな」と心から思えるように寄り添うことです。
介護する側もされる側も、人として尊重し合える関係を築くことが、本当に求めている「良い介護」なのではないでしょうか。