腰痛だけじゃない。介護職が知っておくべき「もう一つの職業病」
介護職と聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるのが**「腰痛」**ではないでしょうか。利用者の身体を持ち上げたり、支えたりする動作は、腰に大きな負担をかけます。しかし、実はもう一つ、多くの介護職が経験しながらも、なかなか気づきにくい「職業病」があります。
それは、**心と感情の疲労からくる「隠れ職業病」**です。
「見えない疲れ」が積み重なる理由
介護の仕事は、利用者さんの身体的なケアだけではありません。心に寄り添い、精神的な支えとなることも大切な役割です。
- 感情労働: 相手の気持ちを理解し、共感しようと努めることは、心のエネルギーを大きく消耗させます。自分の感情を抑え、常に穏やかに振る舞うことが求められる場面も少なくありません。
- 責任とプレッシャー: 利用者の命を預かる仕事であるため、常にミスが許されないというプレッシャーにさらされます。小さな見落としが重大な事故につながるかもしれないという緊張感が、知らず知らずのうちに心に重くのしかかります。
- 人間関係のストレス: 利用者さん、ご家族、そして同僚との複雑な人間関係も、大きなストレスの原因となります。価値観の相違やコミュニケーションの難しさから、精神的な負担を感じることもあります。
このような「見えない疲れ」が積み重なると、心身のバランスを崩し、様々な不調となって現れることがあります。
介護職に多い「もう一つの職業病」とは?
「見えない疲れ」が原因で起こる「もう一つの職業病」には、以下のようなものがあります。
- 燃え尽き症候群(バーンアウト): 仕事に対する情熱や意欲を失い、深い疲労感や無力感に襲われる状態です。「もう頑張れない」と、心がぽっきりと折れてしまったように感じます。
- 適応障害: 新しい環境や人間関係の変化に適応できず、気分の落ち込みや不安、身体的な不調(頭痛、不眠など)が現れる状態です。
- 介護うつ: 責任感やプレッシャーが原因で、気分が沈み、何もやる気が起きない状態です。食欲不振や不眠といったうつ病の症状を伴うこともあります。
これらは、真面目で責任感が強い人ほど陥りやすい傾向があります。自分の感情を後回しにして、他者を優先しがちな人ほど、心のSOSを見過ごしてしまいがちです。
心の健康を守るためにできること
心の健康を守るためには、自分自身を大切にする時間を持つことが不可欠です。
- 自分の心と向き合う: 「最近、なんだか疲れているな」「楽しくないな」と感じたら、まずはその気持ちを認めてあげましょう。無理に頑張ろうとせず、心にゆとりを与える時間を意識的に作ることが大切です。
- 助けを求める: 一人で抱え込まず、信頼できる同僚や上司、友人、家族に相談しましょう。職場の相談窓口や専門家を利用することも有効です。
- オフの時間を充実させる: 趣味や好きなことに没頭する時間、自然の中でリフレッシュする時間を持つことで、仕事から離れて心を休めることができます。
介護の仕事は、他者の人生に深く関わる素晴らしい仕事です。だからこそ、自分自身の心と体を守ることが何よりも重要です。腰痛対策と同じように、心の健康にも意識を向けて、長く健康的に働き続けられるように工夫してみましょう。